主な用途
夜のハイウェーを駆走する車のヘッドライトを眺めると、青白くてちょっと格調高く感じるライトがあります。そのほとんどはキセノンを封入したランプです。キセノン封入ランプは、自然光に近い光を発するだけでなく、クリプトン以上に重たくて熱伝導率の低いガスのため、写真用のストロボや映写機用のランプのように、「自然光と強い光」が必要な場合に利用されています。
もちろん、照明効率はバツグンですが、コストバランスを考える必要があります。
波長308nmを発振するXeCIはレーザー光源として利用されます。
また、キセノン単体でも低いエネルギーでイオン化し、励起状態からは紫外線を放射します。これを利用して、蛍光物質を発光する放電ガスとして、プラズマディスプレイパネル(PDP)の封入ガスに添加されています。
宇宙衛星等の軌道制御用イオンエンジンの原料として実用化されています。重くてイオン化しやすいキセノンの特徴を利用した好例です。化学燃料は重量が重くスペースを取ることから、原子を荷電・加速し、その反発力で衛星を推進させるイオンエンジンは宇宙空間での主役です。荷電の際の電力は、衛星に搭載された太陽電池で賄うことができます。
重たくてイオン化しやすいという性質は、X線検出器としても利用されています。
キセノンは、X線を減ずるとともに、これを電気信号に変える役割を持っています。人体検査に使われるX線CTやX線厚み計等の検出器に封入されています。
キセノンは人体脂肪に溶けやすく、脳組織中等への拡散,溶解性に優れています。さらに、X線の高エネルギー電磁波の透過を防ぐ能力もあるため、人体のCTスキャナーの造影剤として医薬品の認可を受けています。また、昔から麻酔作用は知られていますが、最近の研究で、麻酔能力、鎮痛能力、副作用等のすべての面で、現行の笑気ガスより優れるという報告がされ、再び注目を集めています。
まだまだ馴染みの薄いガスですので、各ガス固有の特徴が生かされる用途は、これから広がっていくものと思われます。