およそ137億年前、宇宙の始まりビッグバンが起こりました。宇宙が急激に膨張するとともにできた水素が重力で引き寄せ合って集まり、大きな星ができあがりました。星の中心部では、およそ1000万度になると水素からヘリウムができる核融合反応が始まり、恒星として輝き始めました。水素の核融合が進むに従い恒星の中心部の温度は数億度に上がり、炭素、酸素、窒素ができ、そして十億度近くになると、ついにネオンが生まれました。
恒星の中心部で鉄ができると、これ以上重い元素はできません。それでは、キセノン・クリプトンはどうやってできたのでしょうか。
平安末期から鎌倉初期の歌人、小倉百人一首の選者として知られる藤原定家(さだいえ)は、その日記「明月記」に、「天貴二年(1054年)四月客星(新しく輝く星のこと)出ず」との記録を残しました。
今、おうし座の方向に望遠鏡を向けると、広がる雲の形をした「かに星雲」が輝き、ガスや粒子が爆発的なスピードで膨張していることが分かります。1054年に突然明るく光り始めた星の正体は超新星でした。
このような超新星は、大きな恒星が進化の最終段階で大爆発し、そのとき一層高温高圧になるため、鉄より重い元素への核融合反応が一気に進んで、クリプトンやキセノンもできるのです。
宇宙に拡がったガスと粒子が集まって、私たちの太陽系ができたとき、地球にもネオン・クリプトン・キセノンが取り込まれました。大気の中に微量に含まれ、私たちを包んでいるのがこのレアガスです。レアガスはさまざまな用途で生活を豊かにするとともに、先端領域ではキセノンが宇宙探査機「はやぶさ」のイオンエンジンの推進剤として宇宙に進出して、いや実は故郷に戻って、元気に活躍しています。
このように、人類の可能性を拡げる、隠れた功労者レアガスは宇宙の恵みといえるのではないでしょうか。
レアガスの世界へようこそ。
はやぶさ:JAXAのHPより
http://www.jaxa.jp/projects/sat/muses_c/index_j.html